国や地域のために働く「公務員」は安定した収入を得られる、かつ勤務時間が決まっているなどの理由から就職先・転職先として人気です。
しかし、公務員の仕事内容にはデメリットと感じる点がいくつかあるため、「やめとけ」と言われることは少なくありません。
公務員になるには試験を突破しなければならないことから、勉強を始める前にメリットとデメリットを押さえておきましょう。
そこで今回は、公務員への就職・転職を目指している人が「やめとけ」と言われる理由を解説します。また、後悔しないポイントについても紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
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公務員の種類と仕事内容
公務員には様々な職種があり、基本的な仕事内容は地域や国の生活全般に関わることです。大きく分けると国家公務員と地方公務員があり、仕事の種類は事務系と技術系に分類されます。
ここからは、国家公務員と地方公務員について詳しく紹介します。
国家公務員
国家公務員は国・国民全体に関わる政策の企画立案などを行います。
職種は特別職と一般職に分かれ、特別職には国会職員・裁判所職員・裁判官などがあり、一般職は仕事内容によって総合職・一般職・専門職に分類されます。
国家公務員の総合職は中央省庁などに勤務し、将来の幹部候補として政策の企画・立案に携わることが主な仕事です。
一般職は総合職により企画・立案した政策を実施・事務処理をする部門です。国家公務員の専門職には次のようなものがあります。
- 国税専門官
- 財務専門官
- 労働基準監督官
- 裁判所事務官
- 法務教官
- 皇宮護衛艦
- 外務省専門職員
これらの多くは中央省庁や関係機関にて勤務し、国としての機能を維持することが主な目的です。
参考記事▶国家一般職はやめとけと言われる理由とは?仕事一覧や務めるデメリット・メリットなどを解説!
地方公務員
地方公務員は国家公務員とは違い、各地域の自治体で勤務します。主に行政職と技術職に分類され、役所の職員などは行政職に該当し、土木・建築などの専門的な知識・技術が必要な職種は技術職になります。
また、各地域で働く教職員・警察官・消防士なども地方公務員です。これらのように、仕事内容は多岐にわたり公的機関の数だけ地方公務員は存在します。
国家公務員は国の運営を担っていますが、地方公務員は各地域が管轄であり役所の窓口業務・行政処理の他にも、公共施設の整備・管理、災害発生時の対応などが主な役割です。
また、日本の地方自治の制度は都道府県と市区町村の二層制を採用しており、地方公務員にも基礎自治体で働く職員と広域自治体で働く職員がいます。
それぞれの管轄エリアは異なるため、業務の種類にも違いがあるのです。
新卒で公務員を目指すのをやめとけと言われる理由
公務員は安定した職業であるため人気がありますが、その一方で「やめとけ」という声を挙げる人もいます。
現在、進路を検討している大学生は、なぜ新卒の公務員に否定的な意見があるかを押さえておきましょう。ここからは、新卒の公務員がやめとけと言われる理由を紹介します。
新卒でなくても公務員にはなれる
現在大学生で公務員を目指している人が「やめとけ」と言われる主な理由は、新卒採用でなくても公務員になれるためです。
特定の職種や地域の自治体によっては募集に年齢制限を設けていますが、役所の多くは30歳前後に設定しています。
そのため、新卒でなくとも試験を突破さえすれば公務員になれます。
例えば、新卒の就職活動では希望する民間企業の採用試験を受け入社し、その後公務員に転職するという選択肢もあるのです。
このようなフローを経ることで自身の希望を叶えつつ、若い内に貴重な経験を積めます。
しかし、新卒で公務員になると民間企業で働く経験を積めず、移るためには転職するしかないため、「新卒で公務員はやめとけ」と言われるのです。
採用に学歴が重視される文化が残っている
試験を突破すると晴れて公務員になれますが、希望の職種に就くためには採用試験に合格しなければなりません。
その中でも国家公務員の人気がある職種や、国にとって重要なポジションになり得る中央省庁の仕事は、採用において学歴を重視する傾向・文化があります。
そのため、せっかく難易度が高い国家公務員試験を突破しても、自身の出身大学によっては希望する仕事に就けない可能性があるため注意してください。
他にも、中央省庁に入り出世するためには、派閥争いに巻き込まれるケースもゼロではありません。
仕事量が多いケースがある
公務員というと「勤務時間が決まっており残業が少ない」というイメージを持つ人は少なくないでしょう。
しかし、職種や配属される部署、自治体によって残業量に違いがあり、場合によっては想定よりも仕事が多いケースがあります。
例えば、役所の仕事でも新しい制度が生まれたときや、住民からの申請が増えるタイミングでは残業は増加します。
もちろん残業した分だけ賃金も増えますが、仕事が多いことに不満を持つ人は少なくありません。
また、地方公務員は2年から4年ほどの周期で人事異動があります。今は残業が少ない部署でも、後々に残業が多くなる可能性は否めません。
年功序列で給与・待遇が決まりやすい
現在でも、公務員の給与や待遇は年功序列で決まるケースが珍しくありません。
これは民間企業と異なり売上という概念がないため評価しにくく、成果を重視することで不正が助長される点を懸念しているためです。
しかし、この年功序列の仕組みにより、若い世代の公務員は仕事量に対し給与が少ないと感じやすく不満に繋がります。
実際に頑張って仕事をしても直接評価に繋がらないケースがあり、モチベーションの低下を招いているのです。
年功序列の仕組みは公務員として働き続けることでメリットと感じられますが、新卒で働き始めてしばらくはデメリットとして捉えてしまいます。
さらに、残業が多い部署は負担が大きくなり、激務と感じる人もいることから「やめとけ」と言われるのです。
人事異動による影響が大きい
先程の通り、地方公務員は定期的に人事異動がありますが、このとき職員の希望や適性は考慮されないことが多いです。
もし職場の人間関係に悩んでいる場合は、しばらく耐えると人事異動により解消できる点はメリットです。しかし、今の仕事内容が好きな人や、業務に慣れてきても、いずれ離れなければならない点はデメリットと言えます。
地方公務員の人事異動はさまざまな業務を経験することや、特定の個人・団体・企業との癒着を防ぐ役割があります。しかし、定期的な人事異動によって配置転換があり、新しい仕事に慣れるまで苦労する人は少なくありません。
土日に出勤する場合がある
公務員は安定した仕事であるものの、職種と状況によっては土日に出勤する場合があります。そのため、確実に土日を休むことが目的で公務員になった人は、意外と休日出勤が多く後悔するケースは少なくありません。
このような休日出勤や残業の多さから「公務員はやめとけ」という意見が出るのです。ただし、公務員が休日出勤をすると振替休日や手当があるため不公平にはなりません。
他にも、公務員は業務を継続するため交代で夏休みを取ることが一般的です。ただし、希望日に休めない可能性がある点には注意してください。
やりがいを感じにくい場合がある
公務員の職種にもよりますが、決まった事務作業をこなす仕事が多いです。特に地方公務員の事務職であれば単純作業が多く、やりがいを感じにくい場合が考えられます。
しかし、住民からの申請処理などの単純作業も生活に関わる重要なものであるため、ミスがないよう緊張感を持たなければなりません。
一方、国家公務員は国の政策・運営に関わる仕事であるため、やりがいを感じやすいでしょう。
しかし、若手のうちは雑用のような単純な事務作業の割合が多いため「面白くない」と感じる人は少なくありません。
公務員の仕事にやりがいを求めている人は、専門職や事務職を目指すと良いでしょう。
試験・採用のスケジュールがタイトである
公務員は試験・採用のスケジュールが決まっており、国家公務員の総合職は4月から7月頃、一般職は6月から9月頃です。地方公務員は4月から8月頃であるため、一般的な民間企業の採用スケジュールよりも遅いです。
そのため、民間企業の就職活動と公務員で悩んでいる人の場合、公務員試験に落ちてしまうと民間企業への就職は日程上難しくなります。
また、公務員試験を受けながら民間企業の就職活動を進める場合でも、それぞれの日程が重なることがあるため注意しなければなりません。
このように、公務員試験に落ちると卒業前に民間企業の内定獲得は厳しいため、どちらかの進路に絞る、もしくは十分に勉強時間を確保し複数の公務員試験に臨むことをおすすめします。
公務員を辞める人の特徴や理由
「公務員はやめとけ」と言われるのは、実際に後悔して辞めた人がいるためです。また、公務員としての働き方が合わず辞めてしまう人もいます。ここからは、公務員を辞める人の特徴を紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
旧態依然とした組織が合わない
公務員の組織は民間企業と異なり、昔からのやり方を変えずに運営されていることが多いです。その体制が旧態依然としていることから、自分には合わないと感じる人は少なくありません。
実際に何か意見があっても通りづらく、さまざまなシーンで融通が利かないと感じるでしょう。そのような組織の体質が合わず、やりたいことができないもどかしさから退職という結論に至ってしまうのです。
仕事が楽しくない・ストレスを感じる
公務員の仕事に嫌気がさして辞める人も少なくありません。ここまで紹介した通り、地方公務員の一般職であれば決まりきった事務作業が多く、やりがいを感じられない人は多いです。
他にも、役所の窓口業務の担当であれば住民からのクレーム対応などもしなければなりません。
特に給付金の申請など新しい制度が生まれた際は窓口が混雑するだけでなく、クレームの件数も増えるでしょう。このようなことがストレスになり、積み重なることで退職に至ります。
労働時間が長く疲れている
安定した公務員の仕事でも、配属される仕事や勤務する自治体によっては残業時間が多くなります。
近年では、新型コロナウイルスの感染拡大によって従来よりも申請・手続き業務が増加し、それに比例して職員の残業も増えました。
同様に災害が発生したときや繁忙期は労働時間が増えるでしょう。また、慢性的に労働時間が長い部署や地域もあり、疲弊する人は少なくありません。
国家公務員の場合でも、若手の間は雑用などを多くこなさなければならず労働時間が長くなることもあります。
このように、長時間労働により心身ともに疲れてしまい、公務員を辞めるに至るケースは少なくありません。
職場環境・人間関係・給与に不満がある
公務員に限らず民間企業にも言えることですが、職場環境や人間関係に不満があり辞める人は少なくありません。
特に公務員の場合は、旧態依然とした文化や年功序列の仕組みが根付いていることに不満を抱える人が多いです。
定期的に人事異動があるとしても同じ職場に数年は勤める必要があるため、我慢できない人は退職を決意するでしょう。
他にも、自身の能力や仕事量に見合わない給与に不満を感じる人も多いです。
例えば、就職してしばらく経過した後、大手民間企業に進んだ学生時代の友人と話しをする中で収入の差を痛感するケースがあります。
その結果、収入アップを目的に転職する人がいるのです。
モチベーションを保てなくなった
公務員は問題・不祥事を起こして処罰されない限りクビになることはありません。そのため、職場には年齢に応じた能力を身に付けていない職員や、最低限の働きしかしない人がいます。
しかし、それらの人は年功序列の仕組みにより、自分よりも収入が多いケースがほとんどです。
このように「頑張って働いても給与に反映されない」ことからモチベーションが保てなくなり、公務員を辞める決断に至ります。
公務員を目指すメリット
大学卒業と同時に新卒で公務員になる場合、ここまで紹介したデメリットを感じることになるでしょう。その一方で、新卒で公務員になるメリットもあります。
今から民間企業への就職か公務員になるかで迷っている場合は、メリットとデメリットをよく比較しましょう。
倒産・リストラの心配が少なく給与が安定している
基本的に公務員として働く場合、倒産やリストラの心配はありません。また、年功序列ではあるものの給与も安定しています。
近年では、大手企業が倒産することも珍しいことではなくなっており、就職活動をする学生は安定を求める傾向にあります。
また、就職氷河期と呼ばれる時期であれば、試験に合格することで就職できる公務員は魅力的な職業の一つです。
将来的に仕事と収入が保証されている点に対し、メリットを感じる学生は多いでしょう。
仕事のプレッシャーは大きくない
公務員には売上の概念はなく民間企業の営業職のようなノルマはありません。もちろんやるべき仕事はありますが、大きなプレッシャーを感じることは少ないでしょう。
実際に、公務員として真面目に勤務し社会に貢献していると一定以上の待遇を受けられ、収入や生活が安定します。
特に今まで民間企業で厳しいノルマを課せられていた人からすれば、公務員の仕事は気楽に感じるでしょう。
現在学生の人も、大きなプレッシャーがかかる仕事に不安を感じているのであれば、公務員として働くことをおすすめします。
社会に貢献できる
公務員の役割は営利目的ではなく国や地方自治体などの運営に関わるものであるため、仕事を通して社会に貢献できます。
地域の活性化や教育、行政といった生活に直結するものであるため、やりがいを感じやすい点も魅力の一つです。
実際に、公務員として仕事をする中で地域の住民と接する機会があり、社会貢献の実感も生まれやすいでしょう。
「生まれ育った地元のために働きたい」と考えている人であれば、地方公務員に向いています。
国家公務員であればさらに規模が大きくなり、自身の仕事がより多くの人に影響します。公務員志望でやりがいを重視する場合は、国家公務員を目指すと良いでしょう。
将来のライフプランを立てやすい
公務員は定期的に人事異動がありさまざまな仕事を経験するものの、その時期や計画はほぼ決まっています。同時に倒産やリストラのリスクがほとんどない安定した仕事であるため、ライフプランを立てやすいでしょう。
収入は安定しているだけでなく金融機関からも信用されやすいため、マイホームや車を購入する際にローンを組みやすいです。
地方公務員であれば採用された自治体の範囲で人事異動・転勤になるため将来の計画を立てやすいでしょう。
その一方で、国家公務員の場合は全国規模の転勤が発生する可能性は否めません。
福利厚生が充実している
公務員は給与が安定しているだけでなく、福利厚生が保障されている点も大きな魅力です。例えば、通勤手当や住宅手当、退職金制度など手当や制度が充実しているため安心して働けます。
民間企業のなかには退職金制度がない場合があり、入社前に詳細を調べることは難しいです。中には手当がほとんどなくサービス残業が多いブラック企業も存在します。
このようなリスクを考えると、公務員として働くことは学生にとってメリットになるでしょう。
公務員を目指す際に後悔しないためのポイント
ここまでの通り、公務員への就職にはメリットとデメリットが存在します。そのため、公務員への就職・転職を考える際には後悔しないように情報を収集する必要があるでしょう。
ここからは、公務員への就職・転職する際に後悔しないためのポイントを紹介します。
公務員・民間のそれぞれのメリット・デメリットを理解・比較する
公務員と民間のどちらに進めば良いか迷ったときは、それぞれのメリットとデメリットを理解したうえで比較検討しましょう。
人によってメリットとデメリットに感じるポイントは異なるため、自分のイメージや希望に近い進路を選んでください。
公務員は給与が安定しており福利厚生が充実している反面、やりがいを感じられない可能性があります。また、仕事で頑張っても直接給与に反映されない点などがデメリットです。
【メリット】
- 給与が安定している
- 福利厚生が充実している
- 失業・倒産のリスクがない
- 社会的な信頼がある
【デメリット】
- やりがいがない可能性がある
- 高い給与は望めない
- 副業は禁止
民間企業に就職・転職する主なメリットは、公務員と違い仕事で成果を出すことで給与アップに繋がる可能性がある点です。
また、公務員は基本的に副業が禁止ですが、民間企業の中には本業に支障が出ない範囲で許可していることもあります。他にも、スキルアップすることで転職が有利になったり、独立できたりします。
しかし、公務員のように安定していないため、業績悪化によって減給やリストラのリスクがある点には注意しなければなりません。
また、全国展開している企業であれば転勤の可能性もあるでしょう。
【メリット】
- 成果が給与アップに繋がる可能性がある
- 仕事の選択肢が広い
- 副業できる可能性がある
- スキルアップによって転職・独立が可能
【デメリット】
- 業績悪化によって減給・リストラの可能性がある
- 全国転勤の可能性がある
- 公務員よりもローン審査のハードルが高い
このようなメリットとデメリットを比較し検討してみてください。
公務員になる目的を明確にする
公務員になるには試験に合格する必要があるため、勉強時間を確保しなければなりません。しかし、ここまでの説明の通り公務員になったことを後悔し、民間企業に転職する人は少なくないです。
せっかく公務員になっても、辞めてしまえば勉強に充てた時間が無駄になってしまいます。
そのため、試験勉強を本格的に始める前に、自分が何を求めて公務員になるのかを明確にしましょう。公務員の内情を知った上で、自分の達成したい目的があれば目指すことをおすすめします。
希望する求人・自治体の雰囲気などもチェック
公務員の希望する求人や自治体の雰囲気も事前に調べておきましょう。例えば、地元の自治体の役所を希望する場合、実際に訪問し雰囲気を確かめてみてください。
他にも、警察や消防署なども事前に申請することで見学できる場合があります。自分の目で見ることで印象が変わり、より志望度が高まる場合もあれば、イメージと違うこともあります。
また、募集要項も事前にチェックすることで得られるものがあるため、将来的に後悔しないよう入念に確認しておいてください。
仕事内容も調べてイメージと擦り合わせる
公務員への就職・転職で後悔する理由は仕事内容が自分のイメージと異なるためで、希望する仕事については事前にどのような内容かを調べることが重要です。
例えば、各自治体は採用情報を公開し、地域によってはパンフレットなどで詳しく解説していることがあります。また、知り合いに公務員の人がいれば普段の仕事内容を聞いてみると良いでしょう。
入念に下調べをし、自分のイメージと公務員の現状を擦り合わせることで少しでも後悔するリスクを削減できます。
まとめ
この記事では、公務員への就職・転職が「やめとけ」と言われる理由について解説しました。
公務員は旧態依然とした組織であることが多く、年功序列の仕組みがあるため、誠心誠意業務に取り組んでも給与に反映されにくいです。
また、仕事にやりがいを持てない人はモチベーションが低下し、退職するケースが少なくありません。
進路を決める際、後々になって後悔しないよう、事前に公務員の特徴やメリット・デメリットを押さえておいてください。
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