残業40時間というと、1ヶ月の稼働日が20日としたとき1日あたり2時間の残業をすることになります。定時は17時~18時に設定されている企業が多いため、通勤に要する時間を踏まえると、だいたい19時~20時に帰宅するスケジュールです。
このように考えると残業40時間は、そこまで長くないと感じます。しかし、実際は長時間に渡る残業が発生している企業・職場は珍しくありません。
勤務先の残業が多いかを知るためには平均時間を押さえましょう。また、残業時間により手取りの給与額は変わってくるため、稼げる金額とのバランスが重要です。
そこで今回は、残業40時間は長いのか、手取り額はいくらになるのかを解説します。手取りの金額が少ないと感じたときの対策についても紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
残業40時間はホワイト企業?平均はどれくらい?
厚生労働省の「毎月勤労統計調査令和3年分結果速報」によると、一般労働者の1ヶ月の平均残業時間は13.2時間です。
残業の平均時間は業界によって異なり、「運輸業・郵便業」の残業時間が最も長く平均25.3時間、「医療・福祉」の残業時間が最も短く平均6.3時間です。
鉱業・採石業等 | 11.6時間 |
建設業 | 14.5時間 |
製造業 | 15時間 |
電気・ガス業 | 15.1時間 |
情報通信業 | 16.3時間 |
運輸業・郵便業 | 25.3時間 |
卸売業・小売業 | 10.8時間 |
金融業・保険業 | 13時間 |
不動産・物品賃貸業 | 14.1時間 |
学術研究等 | 15.1時間 |
飲食サービス業等 | 9.7時間 |
生活関連サービス等 | 8.3時間 |
教育・学習支援業 | 13.8時間 |
医療・福祉 | 6.3時間 |
複合サービス事業 | 8.9時間 |
その他のサービス業 | 13.3時間 |
残業時間の調査は公的機関だけでなく民間企業も実施しています。大手転職エージェントである「doda」が2022年に実施した調査によると、平均残業時間は22.2時間です。
最も残業が多い職種は出版・広告関連のプロデューサー・ディレクター・プランナーの37.1時間であり、最も残業が少ない職種は秘書で10.0時間という結果となりました。
ここまでの調査結果の残業時間から考えると、1ヶ月に40時間を超えると平均よりも多いといえるでしょう。
残業40時間の手取りはいくら?20万円は少ない?
残業時間の長さに対し給与が低い場合は不満を感じるでしょう。自身の給与が適切かを判断するためには、残業代や手取りの計算方法を押さえてください。ここからは、残業代の計算方法などを紹介します。
残業代の計算方法
残業40時間の手取りを計算するためには、まず残業代の計算方法を押さえましょう。残業代は次の計算式で求められます。
1時間あたりの基礎賃金×割増率×残業時間
※月給制の場合の基礎賃金=1ヶ月の基本給÷月平均所定労働時間
(通勤手当・住宅手当などの諸手当は除く)
例えば、1ヶ月の基本給が20万円であり、1ヶ月の稼働日が20日、1日の所定労働時間が8時間の場合、1時間当たりの基礎賃金は1,250円です。
厚生労働省の資料によると、残業代の割増率は次のように決められています。
※所定労働時間が午前9時から午後5時(休憩1時間)までの場合
①17時~18時:法定時間内残業:割増率=1.00倍
②18時~22時:法定時間外労働:割増率=1.25倍
③22時~翌5時:法定時間外+深夜残業:1.50倍(1.25倍+0.25倍)
残業40時間で毎日18時から20時までの2時間を残業した場合の残業代は次の通りです。
1時間あたりの基礎賃金(1,250円)×割増率(1.25倍)×残業時間(40時間)
=62,500円
基本給の20万円と残業代を加えると、総支給額は26万2,500円となります。
残業代の手取りの計算例
手取りとは自分が実際に受け取れる金額のことであり、総支給額から所得税・住民税・社会保険料などが天引きされます。
手取り額の詳しい計算式は金額によって変わるものの、額面の75%~85%になるため、一般的に総支給額の8割で計算します。
先程の計算式では総支給額が26万2,500円であるため、この金額に80%をかけると手取り金額は21万円です。
手取り20万円は妥当
残業40時間は平均よりも多いですが、その分残業代が支給されるため総支給額は増えます。
基本給が20万円で残業が40時間の場合の手取り金額は21万円であるため、同じ状況で20万円前後の金額を手取りとして受け取っている場合は妥当といえるでしょう。
ただし、みなし残業制度を導入している職場・職種の場合は、これらの残業が既に給与へ反映されて計算されるため、20万円を下回る可能性があります。この場合は、基本給が20万円よりも低くなるでしょう。
働き方改革の影響
もし残業時間が40時間を超えており「長い」と感じる場合は、働き方改革の影響を受けている可能性があります。
働き改革により1ヶ月の労働時間に上限が設けられ、長時間労働時の賃金が引き上げられました。その結果、直近の10年の残業時間は減少傾向にあります。
OpenWorkが実施した調査によると、10年前の残業時間は40時間を大きく上回っていましたが、2021年では24時間まで減少しました。
つまり、労働環境が変わらない職場に転職したとき、今までよりも残業時間が長くなることによって「長い」「つらい」と感じるケースがあります。
残業40時間と手取りの関係
残業時間と手取りを考える際には、残業が発生する時期も大きく関係しています。残業時間が長くなると、その分総支給額は大きくなりますが、そのタイミングによって控除額が変化するため注意しなければなりません。
総支給額から差し引かれる社会保険料のうち、雇用保険料を除く厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料は、4月から6月の給与額の平均をもとに計算されます。
そのため、この時期に残業が多くなり給与額が増えると、比例して控除される社会保険料も高くなり、同じ残業時間でも手取り額が減少するのです。
例えば、年間の月間平均残業時間が40時間の場合でも、4月から6月まで1ヶ月60時間も残業があり、残りの時期30時間の場合では計算対象月の給与が多くなることで、毎月同じ残業時間のときよりも社会保険料は高くなります。
残業時間は自分でコントロールできない部分があるため、手取り額を増やしたい人は総支給額が多くならないように注意しましょう。
残業が多い場合はルールを把握しよう
残業にはいくつかのルールがあるため、どのようなものがあるのかを把握しましょう。
残業代に関する主なルール
残業代の手取り額に不満がある人は、まず関連するルールを押さえましょう。主なルールは次の2つです。
①残業代は1分単位で計算する
②残業代は3年間で消滅する
残業時間のカウント方法は企業によってまちまちであり、15分単位・30分単位で記録しているケースは珍しくありません。しかし、残業代は1分単位でカウントしなければなりません。
ただし、月の総残業時間に対しては、30分未満は切り捨て・30分以上は1時間に切り上げられます。このようなカウント方法により、正しい残業時間を計算できます。
また、未払いの残業代は企業側に請求できる権利がありますが、その消滅時効は3年間です。そのため、未払いの残業代があっても、3年が経過すると請求できなくなるため注意してください。
労働形態別の残業時間
労働形態によって残業時間のカウント方法が異なります。先程のみなし残業制(裁量労働制)以外にも、変形労働時間制やフレックスタイム制などがあります。
変形労働制とは、日・月ごとに異なる所定労働時間を定められる制度です。この制度では、月・年単位の労働時間の週平均が40時間を超えない範囲で、1日8時間・週40時間を超える所定労働時間を決められます。
このときの対象期間の労働時間上限は「40時間×対象期間の暦日数÷7日」で計算し、この時間を超えたときに残業としてカウントします。
フレックスタイム制は、コアタイムを除き始業・終業時間を従業員が決められる制度です。この場合では日により労働時間が異なるため、集計する期間ごとに残業時間が発生します。
この集計期間は「清算期間」と呼ばれ、1ヶ月・2ヶ月・3ヶ月の中から決まり、その期間ごとに決められた時間を超過したものが残業となります。
残業40時間が問題になるケース
残業40時間は平均よりも長いため、場合によっては問題になるケースがあります。どのようなケースが該当するのかを紹介します。
36協定がなければ残業はしてはいけない
労働時間や残業に関するルールは、労働基準法によって定められています。原則として労働時間は1日に8時間、週40時間を超えてはなりません。
この時間を超えて残業する場合は、労働基準法の第三十六条で定められている通り、使用者・労働者間で協定を結ぶ必要があります。なお、「36(サブロク)協定」と呼ばれている理由は、第三十六条で定められているためです。
この協定が結ばれていない状態で残業をすると違法となります。
(時間外及び休日の労働)
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
上限時間が決まっている
残業時間は労働基準法により1ヶ月45時間・年360時間と上限が決まっています。つまり、残業40時間であれば上限に収まっているため問題ありません。
しかし、毎月残業を40時間以上していると年間で480時間になるため、上限を超えてしまいます。臨時的な特別の事情がない限り、上限を超えてはならないため注意しましょう。
前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
残業代がでていない場合は違法
残業が発生しているにも関わらず、残業代が支払われていない場合は違法です。全く支払われていない「サービス残業」だけでなく、適切に支払われていない場合にも注意しなければなりません。
例えば、実際の残業が40時間に対し20時間分の賃金しか支払われていない場合も違法です。
他にも、固定残業代が支給されている場合も、あらかじめ設定された時間以上の時間外労働が発生している場合は、追加の残業代が必要となります。
残業40時間で手取りが少ない場合の対処法
残業が多い場合でも手取り額が少ないと感じるケースはあるでしょう。ここからは、残業時間に対し手取りが少ない場合の対処法を紹介します。
短縮できるよう工夫する
残業時間が長いことに不満がある場合は、業務の効率化を図り極力短縮できるように工夫しましょう。実際に同じ作業量であったとしても、人によって完了するまでの時間は異なります。
作業効率によって残業時間は変わるため、普段の仕事から少しでも時間が短くなるように考えましょう。
例えば、Excelやスプレッドシートを使う作業が多い場合は、有効なショートカットキーを覚えることで効率化を図れるケースがあります。
他にも、周囲と比較して仕事量が多い場合は、他の人を頼ったり上司に相談して配分を変えてもらったりすると良いでしょう。
副業で収入を増やす
残業時間ではなく収入面に不満がある人の場合は、空いている時間を活用して副業で稼ぐ方法があります。現在では、スマートフォンやインターネットの発展に伴い、手軽に仕事ができるようになりました。
例えば、単発のアルバイトやクラウドソーシングサービスなどにより収入を増やすことは可能です。これらの仕事の中には、資格やスキルを活かせるものが多くあります。
例えば、プログラミングの知識やスキルがある人であれば、土日などの時間を活用して高収入を狙える仕事に取り組めるでしょう。
ただし、案件によっては単価が低かったり、勤務先の会社が副業を禁止していたりするため注意してください。
基本給が高い会社に転職する
残業代が少ないと感じる場合は、そもそもの基本給が低いケースが考えられます。残業代は決まった計算式のもと算出され基本給の金額の影響を受けます。
例えば、残業時間が変わらず業務内容が同じ会社に勤めていても、基本給の設定次第では手取り額に大きな差が生まれかねません。このような場合、業務内容が近く基本給が高い会社に転職すると良いでしょう。
転職エージェントを利用すると転職する際は無料で利用でき、希望に合った求人を紹介してもらい、さまざまな支援を受けられます。
面談時に現状を説明し、基本給が高い企業を希望している旨を伝えると良いでしょう。
残業が少ない会社に転職する
近年では、長時間労働が問題視されているため、残業が少ない点をPRしている企業は多いです。残業の長さに不満がある人で自分の力では減らせない場合は、このような会社に転職すると良いでしょう。
先程と同様に、転職エージェントを利用することにより、適した企業を紹介してもらいやすくなります。
残業40時間が課題のときのおすすめの転職エージェント
残業が少ない会社を選ぶならマイナビエージェント
- 転職回数や求職者の年代に合わせたサポートを受けられる
- 希望業界の採用事情に詳しいアドバイザーが在籍している
- 2023年オリコン満足度調査で第1位を獲得している
マイナビエージェントは株式会社マイナビが提供している転職エージェントです。2023年の「オリコン満足度調査」にて、転職エージェント部門の総合ランキングで第1位を獲得しています。
求職者へのサポートに定評があり、転職回数や年代に合ったサービスを受けられます。希望する求人の紹介から、応募書類の添削や面接対策などのサポートが受けられるため、効率良く転職活動を進められるでしょう。
希望業界の転職事情に詳しいアドバイザーが在籍しており、残業時間や基本給などの情報も収集でき、希望する職場へ転職しやすい点も魅力です。
運営会社 | 株式会社マイナビ |
公開求人数(2023年6月21日時点) | 45,735件 |
対応地域 | 全国 |
職種 | 全職種 |
種類 | 総合型 |
求人数が圧倒的に多いリクナビエージェント
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リクルートエージェントは株式会社リクルートが運営する転職エージェントです。数ある転職エージェントの中でも圧倒的な求人数を誇ることから、希望条件で詳細まで絞り込んでも良い案件に出会いやすいです。
そのため、基本給が高い企業や残業時間が少ない職場への転職を成功しやすいでしょう。さらに、転職を成功に導くコンテンツも豊富に用意されています。
求人紹介だけでなく、応募書類の添削・面接対策・企業情報の提供などの支援もあるため、内定率を高められます。
運営会社 | 株式会社リクルート |
公開求人数(2023年6月21日時点) | 400,442件 |
対応地域 | 全国 |
職種 | 全職種 |
種類 | 総合型 |
残業40時間の手取りに関するよくある質問
何時間から多いといえますか?
残業時間の平均時間は、厚生労働省のデータによると13.2時間であり、民間企業の調査によると22時間~24時間ほどです。
また、労働基準法に定められている1ヶ月の残業時間の上限は45時間ですが、年間では360時間です。そのため、1ヶ月の平均残業時間が30時間を超えると上限に達します。
これらのことから、少なくとも平均残業時間が30時間を超えると「多い」といえるでしょう。
1時間あたりの残業代は?
1時間あたりの残業代は基礎賃金によって変わります。基礎賃金は人によって変わるため、あわせて残業代の金額も変わるでしょう。
例えば、1日8時間で20日稼働の場合、月の基本給が20万円の人であれば1時間あたりの残業代は1,250円、基本給が40万円の人であれば2,500円となります。
まとめ
この記事では、残業40時間は長いのか、手取り額はいくらになるのかを解説しました。平均的な残業時間は厚生労働省のデータによると13.2時間であり、民間の調査データでも25時間前後です。
そのため、残業が40時間もある企業は平均よりも多いといえるでしょう。その場合、手取りは基本給が20万円で所定労働時間が1日8時間、1ヶ月に20日稼働のときで21万円前後になります。
もし残業時間や残業代の金額に不満があるときは、転職エージェントを活用し希望条件の職場への転職を検討してみてください。
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